2025年8月

仕事の本質について

roku

日時:2025年8月
場所:某病院 → 某斎場

指示の入報

1件目の搬送が終わると、一度事務所に戻って車両の装備を整えた。これを「リセット」と呼ぶようだ。

すると息をつく間もなく次の指示が入報し、現場は某病院と告げられ、車両を走らせた。ここは富裕層が多く利用する病院だ。

病院での準備

指定の時間まで余裕があったので、途中のコンビニで小休止をとり気持ちを落ち着けてから、定刻に病院へ向かった。受付を済ませて霊安室前に霊柩車をつけた。

その時、先輩は1人でサッサと霊安室へ入ってしまった。私はストレッチャーを準備して外で待っていた。暫くして先輩が戻りドアを開けた時に見苦しさと、車両の埃などを指摘し、自分でやり直していた。悔しさと申し訳なさが入り混じった。

ご遺体との対面

霊安室へ呼ばれ、ストレッチャーを押して中に入ると、高齢の男性のスーツを着用した故人とご遺族がいた。ご遺族の視線を感じると、背筋が自然と伸びる。

故人をストレッチャー移す場面では、二人で呼吸を合わせて無事にお乗せできた。

病院からの見送り

この病院では、先生や看護師が集まって最後のお見送りをする。霊安室を出ると、白衣姿の方々が静かに並び、ご遺体を見送っていた。その光景は胸に迫るものがあり、私も自然と気持ちが引き締まった。

ご遺体を霊柩車にお乗せする作業も、少しずつ手に馴染んできた。ほんの小さなことだが、成長を感じられる瞬間でもあった。

斎場へ向けて

ハザードを点け、ゆっくりと車を走らせる。今回は距離があるため、ご遺族に相談して高速道路を利用した。車窓に流れる景色を眺めながら、「無事に斎場までお届けしよう」と改めて心に誓った。

しかし、最後に思わぬ出来事があった。

燃料補給のため途中で事務所に立ち寄った際、先輩が事務員の依頼でご遺体を見せ物にしていたのだ。のちにその事を知った古株の方は「ご遺体を見せ物にしてしまった」と深く悲しんでいた。もし故人の魂やご遺族がそれを見ていたら、どれほど辛かっただろうと仰っていた。

今回の学び

我々は仕事の本質は故人とご遺族に寄り添う事である。

常に敬意を持って接する事が大切だ。

それを理解出来ないのなら、この仕事を続ける資格はない。

都合よい言い方かも知れないが、今回の件は故人が私に「学び」を与えてくれたのだと受け止めたい。そう思う事で、今後も慢心せずにこの仕事と向き合っていけるはずだ。

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